椅子の背にかけた上着

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短文

病気未満

半年ほど前に書いた物です。吐き出し文で鬱々してます。してましたが、今はかなり大丈夫です。何回も何回も迷うと思います。

花の影、落ちた花弁をにらむように愛おしむ

省略

美術部の合宿で、とある島で過ごしていた時、水彩の風景画が課題で、山並みから海への平凡な湾の風景を描いていたところ、通りがかったおじさんが、「俺の家がない」と笑って行った。 省略したことで、おじさんを家無しにしてしまったらしい。

2005.5.6

誕生 「大変お疲れ様でした。後はこちらで大事にします」 『ええ、ありがとう。またね』 「うわーかわいい!」「まあ、かわいらしい」 「このぐらいの頃が、一番かわいいね」「いや、元気良く走り回るのも好きだ」 『今が一番かわいいの? これからはどうな…

合唱部の彼女

新設校の合唱部は、大して熱心な活動をしているわけじゃなかった。帰宅部でいるのは、クラスでも座りが悪い。一生懸命に運動部で没頭するほどには頑張れない。文化部でいたって親は怒らない。寧ろ女の子だからその方が良いという、気楽なおうち。だから、気…

山の中、祠の饅頭

うっすら浮き上がる汗を指先でなでながら、石段を上り詰めると、赤い鳥居があった。広場に真っ直ぐ続く踏み石の誘導。小さな鳥居をくぐって祠の前。木漏れ日がぽつぽつと屋根を透かしていた。古くて傷んでいる。慎ましい佇まいは、こういった所にあまり来な…

30の大学生

「何でまた大学に?」「今持ってる資格で転職を考えていたら、最近はどこも大卒が有利でじゃあ通っちゃうかー!と思って」 快活で爽やかな彼女は、自由人だった。思い立ってワーキングホリデーまでやらかしていた。過ごした土地は、大らかでとても良かったよ…

気になるもの

もはや私にはその繊細さを感じるのには限界がある、新生児の赤ん坊の肌。私たちを包む世界を匂いと温度で蓄え伝えてくれる、目の詰まったタオル。陽に傷めつけられたそこに水をかけると飲む様に吸収する、コンクリの床。脆さを知りながら摘んで傷を付けたく…

メモ

守るものがないと立っていられない。

ねえ、それよりも

早朝、蝉が鳴き出す。ジワジワやかましい声がねっとりした空気に絡み、水の対流のように辺りに溶け込んで広がっていく。これはまだ手にすべき季節じゃないと思った。思えば冬からずっと、時間が止まったままでいた。体内にあるものは全て古い澱で、ふと洗い…

答え

言葉にすることが答え しかし言葉にしない方がより滲み込んでいる

喧嘩

喧嘩から意地を張って電話してない。こちらが折れるのは嫌だ。弱音を吐きそうになって考えたのは確かに彼のことだったが、恋人ではなく家族でもない。友人とはなんだろう。あれは確かに、互いの意見の押し付けを始めた瞬間だった。二人とも友人が少なくて、…

メモ

曇り空 膨張する水の塊 はじけて雨 - 降る見えない雪 冷気に肌を晒して手を伸ばしたらチリと小さく流れた 最期に見たのは空の奥青黒い空間 何もかも合切溶け込んだ等質のそこに ああ溶けてなくなるのかと思った 本当に怖くてしょうがなくて絶対に嫌だとしか…

とりかご

鳥かごに入れたらうるさく鳴いた。 出さないとは言ってないでしょう。

私たちはそれを踏んだ。

花散る季節、さわと吹いた風に、この意地悪く尖った気を散らしてしまえば、きっと薄まって辛くはなくなるのだろうと信じた。 誰もが同じに辛くはあり、人に拠れば一層激しく感じる陰の感情などは、皆そう忘れてしまえばいい。 いつまでも、抱えればこそズキ…

変な子

彼女は多く悩んでいるように見えた。話していてもふいに言葉を止めて宙を見る。眼球が何かを追うような動きをして、思索に耽ってしまったようだ。空いたままの口を笑い、こちらに注意を戻しても、何を考えていたかは聞けなかった。そうして彼女は時々動きを…

多く細かく考えすぎる想いすぎる人は、その繊細な生き様で、周囲に影響を与える。

風に形があってそれに隙間があるかのように、風の向こう、切れ目から覗く闇の中から目。じっとこちらを見て、白い顔が呟いた。この春に影はなしこの春に闇はなし口惜しい先程まで傍にいた少女の声が響く。「おい……」彼女が妖の者に攫われたかと驚き、しかし…

無題

誰が聖戦と名付けたか、戦いに聖なる形などないのにいつしか、全てを守ったものとしてそれは語り継がれるようになった。神格化されたその結果、およそ人と見てもらえず、居心地悪い世界を彼らは去った。気持ちよく一蹴りでもすれば、少ない人数でも気付いた…

熱の日

肩に手が乗って、とても。嬉しいのと恥ずかしいのと。それは、触れてもらえる嬉しさと、自意識過剰の高鳴りで。顔が熱くて、多分耳まで真っ赤。髪に隠れているならなあと僅かに望んでも、見えているかもしれないという意識が先でどうしても、恥ずかしくて情…

しとり。

綺麗な晴れ着、妹の。華やかな、赤に銀の刺繍の川。綺麗な色紙の様、そんな着物があるなんて。これを羽織るなんて。なんて羨ましい。決して女子のようになりたいわけではない。だが、鮮やかさについ、手を通してしまった。 しとり。 肌に吸い付く絹の感触。…

そりゃあ大層な理由が見つかればアタシだって、胸張って書いてるもんですよ。何でそうでもないのに、こう、ぐうたらぐうたら書き連ねるのかというと、内から出てきて収まりゃしないんです。例えばね、最前見た夢などはキョーレツなもんでしたよ。山ほどに大…

はてしない物語の転の辺り

その向こうとこちらを、隔てるのはきっと ミルクの膜よりも薄い…………

陽の光は何故か白

空気に色はついていないけど、窓の外から入ってくる光は白い色をしていると思う。目覚めてカーテンの隙間から差し込む光。眩しくて一つまばたきしたら風で揺れた。 (あ、窓を閉め忘れた) 道理で室内が少し湿気の匂いをしている。夜露の匂いがまだここには…

潮の味がする

ちろ、と出した舌で唇を舐めたら乾燥した皮膚が喜んだ。何故か喉の奥で潮の味がした。たぶん、大昔の土地の記憶。昔ここは海だった。

玉座

工場の大きな装置の真下、工場長を座らせて、王冠載せてライト当て、玉座に見立てて撮らせて欲しい。