椅子の背にかけた上着

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ヨコハマ買い出し紀行について

飛び飛びで買っていて、家の中あちこちで読んでいたので、買い足そうとして何巻がないのかあやふや。

良い。これは何回も眺めている。世界観の寂しさと対照的なキャラクターのたくましさ、というのか、生活感が好き。暖かいやりとりや、厳しい自然の中で起きるハプニング。みなどこか旅人っぽい。だからか景色がとても豊かで鮮やかで、空の奥行きや道のでこぼこ、草むらも風も、愛情溢れた視線に抱かれている。

アルファさんはロボットだ。そのくせ人一倍自然体で生きている。でも時々、自分がロボットなのが少し残念だと言う。「皆は同じ時代の船に乗っている」「私はそれを岸で見てるだけかもしれない」そういう距離を大きく捉えるかどうかでつまらなくもなってしまうけど、自然体だからさらりと口に出して、するっと相手の中に入っていく。

本当に、少し、残念なんだろう。その少しが時に憂鬱の材料になっても、そういう日もあるだろう、という暖かい場面になる。深く面倒くさく考えないで、深いところに誘われてしまう漫画。なのに全体が、たゆんとした膜で包むように、ゆったりとしている。

単に描線の問題ではないんだろうなあ。例えば6巻の巻頭のカラーページ。草むらを手前の見開き右ページに、岸壁の歩道を行くアルファさんの後ろ姿がある。その岸壁コンクリに流れているシミが、このたゆんとした膜の正体じゃなかろうか、と思える。

ヨコハマ買い出し紀行 6 (アフタヌーンKC)

ヨコハマ買い出し紀行 6 (アフタヌーンKC)